法律系資格のここが難しい 病院開設中止勧告を例に書いてみます

先日、行政書士に興味を持ってからすぐにテキストを購入し、早速勉強を始めています。

が、素人にはなかなか難しく。特に判例と結論を読んでも「で結局どうなったの?」というのがあまり分からない。

もうちょっと分かりやすい日本語で書いてくれればいいものをと思いつつ、プロには読みやすい文章になっているのかもしれないとも思ったり。

Contents

判例を一つ挙げてみます

病院開設中止勧告の処分性(最判平成17年7月15日)

【事案】
病院開設の許可申請をした者が、都道府県知事から開設中止の勧告を受けたもののこれを拒否したため、開設許可処分とともに「中止勧告にも関わらず病院を開設した場合には、保険医療機関の指定を拒否する」旨の通告がされたことから、当該勧告及び通告の取消訴訟を提起したところ、病院開設中止勧告の処分性が争われた。

【結論】
病院開設中止勧告の処分性は認められる。

合格革命 行政書士 基本テキスト 2023年度版(早稲田経営出版)

太字部分は僕が勝手に付けました。

ふむふむ、なるほど・・・

って分かるかこんなもん!

これ以降にも判旨が続きますが、素人の自分が読むと「で結局どうなったのよ?」となるわけです。プロからすれば「これの何が分からんのだ?」となるのかもしれませんが。

書いてあるのは日本語で、難しい漢字を使っているわけでもないので読めはしますよ。でも内容が全く入ってきません。twitterでクソリプ飛ばすやつの読解力もこんな感じなんだろうと思ったりします。

一般によくある解説

以下、法律学習歴1週間程度の自分が頑張って解説してみますが、内容に誤りがあるかもしれません。その場合は指摘頂けましたら幸いです。

それではまず用語について解説しておきます。

処分(または行政処分とも言う)とは、行政機関(国や市町村、省庁、なんちゃら委員会、警察署、消防署など)の一方的な意思によって権利や義務その他の法律上の効果を発生させる行為になります。例えば、交通違反点数が積み重なって免許が停止されるのも行政処分です。

行政機関が行う勧告は、従うことを期待してされたものであって、従わなかったとしても何か処分があるわけではありません。だけどその後「開設は許可するけど、医療保険機関としての指定は認めないよ」ときたわけです。

保険の効かない病院なんてほぼ誰も行かないです。僕も行きません。お金持ちの人は行くかもしれません。つまりこのまま病院を作ったとしてもほぼ100%経営が立ち行かなくなります。

なので、これは勧告と言っても強制力を持ってるのと同じようなものだよね、つまり処分性が認められるという判決になりました。ちゃんちゃん。

なるほど・・・

ってまだ分からん

処分性が認められたらどうなるのよ?というところまでこっちは知りたいわけです。この結論は病院側が嬉しいのか都道府県知事側が嬉しいのか、それすらも分かりません。素人なめんなw

試験に合格するためだけならば、その後の話はどうでもよくて、この場合は勧告も処分性があるという事を覚えておけばいいのかもしれません。しかし、こんな勉強じゃ面白くないです。

かつて僕は小中学生の頃、歴史が大の苦手でした。それは教科書に書かれている事を覚えるだけの教科だと思っていて、その奥に書かれていない人間の感情やら何やらが色々と渦巻いているというのが全く見えてこなかったからです。

そのような勉強をまた繰り返したら、絶対に面白いと思えなくなってしまうのは火を見るより明らかです。

ということで自分なりにさらに突っ込んで解読してみると

上記の判例は最高裁のものですが、それまでに一審、二審を経ています。そこでの判決は、これは勧告であって法律云々は関係なく処分性のないものだから、裁判で取り消すかどうか争うものではないといって門前払いされてきたのでした。

それに納得行かない病院側が上告したというのが前提です。病院側の希望としては、門前払いではなくてしっかりと裁判で内容を争ってほしいというものです。

そして最高裁で、通告部分については取消の訴えを却下した一審、二審の判断は認めるけど、勧告の部分については処分性があるから門前払いとした一審の判断は取り消してもう一度地裁で争ってねという判断になりました。

つまり、病院側にとって嬉しい結果になりました。病院側が「よしっ」とガッツポーズして、都道府県知事側が「ぐぬぬ」と唇を噛むような状況が思い浮かびます。これは完全に僕の想像ですが、こういう映像が思い浮かぶことで理解が深まり記憶が定着します。

なぜ理解できないのか

これについては、自分なりに2つの説があります。

1.用語が分からない

まあそりゃそうだ、ってこれは誰もが思うことでしょう。処分性ってどういう事?勧告?通告?と一つずつ調べていったら相当に時間がかかります。このエントリも書き始めてからすでに4時間経っています。

これについては、あまり語る事はありません。覚えていって慣れるしかないと思います。ただ最初から全部理解しようとして一つずつ調べていたら、いくら時間があっても足りません。なので何となくの理解でどんどん進めていって、もやもやとした理解を形作ってから、それを段々と具体的にしていくのがいいと思っています。そのつもりで今は学習を進めています。

2.独特の二重否定、三重否定表現がある

上記判例の全文から引用します。

 以上のとおりであるから,本件通告部分の取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断は是認することができるが,本件勧告の取消しを求める訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の限度で理由があり,原判決のうち本件勧告の取消請求に関する部分を破棄し,同部分につき第1審判決を取り消して本件を富山地方裁判所に差し戻すとともに,上告人のその余の上告を棄却すべきである。

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail5?id=15369

これの分かりにくい部分を取り出します。

「通告部分の取消しを求める訴えを却下した判断は是認するが、勧告の取消しを求める訴えを却下した判断には、法令の違反がある。」

一つの文の中に取消し、却下、取消し、却下、違反がある、と続きます。

これ、パッと見て分かりにくすぎませんか?取消したの?取消の訴えを却下したの?取消の訴えを却下したのは違法だったの?結局どっちやねん!?となります。

グリザイアの果実だったかで野球をやるシーンがあって、ピッチャーの投げた玉をピッチャーに打ち返して「ピッチャー返し」、ピッチャー返しの玉をピッチャーが弾き返して「ピッチャー返し返し」、ピッチャー返し返しの玉をまた打ち返して「ピッチャー返し返し返し」・・・みたいなのがありましたが、そのイメージです。

よく読めば理解はできますが、よく読まないと理解できない文章です。法律やってる人にとってはこれが分かりやすい文章なのでしょうか?それは分かりませんが、プログラミングやっている人間がこんなソースコード書いてたら、それを見た他の人間からぶん殴られますよ。

ちなみに前半は取消しの訴えを却下したのを認める、後半は取消しの訴えを却下したのは違反、というわけです。

大体、一文で書こうとするから分かりにくくなるんです。そこで、こんな風に書いてみてはどうでしょうか。

原告の訴え
1.本件通告部分の取消しを求める
2.本件勧告の取り消しを求める

原審の判断
1.訴えを却下
2.訴えを却下

最高裁の判断
1.訴えを却下(原審の判断を是認)
2.原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

結論
1.棄却
2.第1審判決を取り消して富山地方裁判所に差し戻し

こっちの方が分かりやすいでしょ。しかしこれだと、行数を無駄に消費するという欠点はあります。全てをこんな書き方にしたらPDFファイルが何十枚にもなりそうです。それに僕が一人ここで文句をたらたら垂れたところで法曹界を変えるなんて不可能だということは百も承知なので、やっぱりこの書き方の文章に慣れるしかなさそうです。

たまには判例を1つ掘り下げて見るのも面白いかと思いやってみましたが、実際にやってみたらこれで1日が終わってしまいました。書き始めはまだ明るかった窓の景色も、今ではもう薄暗くなり始めています。

以降はあまり深入りせずとりあえずどんどん進めようと思います。

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